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にこにこ笑顔のベコ名人


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かくだ創業スプラウトは平成30年度より「食の創業支援」を実施し、「食」に関する創業がしやすい町づくりに取り組んでいます。角田市には豊かな食材があり、個性的で素晴らしい多くの生産者さんが角田の「食」を支えています。そんな素晴らしい生産者さんたちの魅力を皆様に伝えたい!この記事を見た方達が、この生産者の食材を使いたい!と思うキッカケにしたい。そんな想いを伝えていくのがこの企画です。


大事な初回を任せていただいたのは東北学院大学4年在学、veeell Inc.(※1)インターン生の牛木章裕です。


さて、記念すべき第一回目の生産者は、角田市の東根で畜産業を営む「ベコ屋の洋ちゃん(※2)」こと山田洋一さん(以下、洋ちゃん)です!角田の方であれば「ベコ屋の洋ちゃん」の名前を一度は聞いたことがあるのではないでしょうか。実は洋ちゃんは仙台市など他の地域でも知る人ぞ知る生産者さんなんですよ。

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洋ちゃん牛のメンチカツ

洋ちゃんといえば美味しい牛肉。私がアルバイトしている飲食店で、期間限定メニューの牛メンチカツとして提供させていただいております。これが大人気!サクサク衣の中から溢れ出す肉汁の様子は、今流行りのインスタ映え間違いなしの光景でございます!私がお店で調理した牛メンチカツを「美味い」と言っていただくと、私も幸せな気持ちになります!私もお客様も幸せ……なんとも素敵な空間ですね。


今回は提供する側もお客様も幸せにする美味しい牛肉をつくる秘訣や、角田では珍しいお肉の直売所を経営する想いなどを聞いてきました!



※1 veeell Inc.は宮城県角田市の株式会社。「かくだ創業スプラウト」の構成機関であり、平成30年度角田市起業者支援業務を実施しています。

※2「ベコ」とは東北地方で牛のことを指す。



Profile

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山田洋一(63歳)愛称は洋ちゃん。角田市出身。農業高校卒業後、角田市で自ら牛1匹の畜産業と農業で事業を起こす。平成14年4月に直売所「ベコ屋の洋ちゃん」をオープン。週末限定(金・土・日)で営業している。現在は約200頭の牛を肥育しており、年間120頭の牛を出荷している。


インタビュア 牛木章裕(以下、牛)

インタビュイ 山田洋一(以下、洋)




BSE事件から生まれた消費者のための直売所

牛)「ベコ屋の洋ちゃん」という名前は、かなり独特なネーミングですよね?なぜそのような名前にしようと思いましたか?


洋)もちろん広告的な効果も期待しました。インパクトもあるし覚えやすいですし。

一般的には「山田精肉店」とかそんな感じでいいのかもしれけど、柔らかい表現をしてお客様に親しみを感じて欲しかったんです。


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店頭に立つ山田洋一さん

牛)お肉の生産者が自分で直売所をオープンし、自社製品を販売するのは珍しいですが、なぜ直売所をオープンしようと思ったのでしょうか?


洋)直売所を開くことになったキッカケは平成13年9月に起こった「BSE事件」です。それまでは牛1頭につき100万円ついていた値段が、BSE事件が起こった直後は1頭10万円にまで下がってしまいました。エサ代だけでも25万円もかかるのに……。


牛)それでは売れば売るほど赤字になってしまいますよね!?


洋)その通りです。この仕事の難しいところですが、社会に変化が起こると、市場の相場にも影響を与えてしまいます。そうすると、こちらの生産などのやり方も時代に合わせて変化しないといけないのでとても大変です。


牛)「BSE事件」が起こった当初、洋ちゃんが育てていた牛はどのような状況でしたか?


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洋ちゃんの愛情が注ぎ込まれた牛たち

洋)当時も牛の健康状態は良好で、牛肉の品質にも自信はありました。ですが、予想通り風評被害の影響を受け、その現状を打ち破るには自分自身が行動するしかない状況でもありました。そこで私は平成14年4月に直売所「ベコ屋の洋ちゃん」をオープンしました。なぜなら、育てた牛の責任を自分自身が持ち、消費者に安心安全で美味しい牛肉を食べて欲しいという想いがあったからです。


牛)「BSE事件」の翌年4月にオープンしたというタイミングを考えると、とても素早く行動されたと感じますが、そこは意識しましたか?


洋)はい、社会の変化に対してすぐ行動することを意識しているので。やるからには全て早く行動することが一番だと思っています。だから新しいことをしてもうまくいかないなって感じたら辞めるのも早いです(笑)。




独自の飼育方法やこだわりがあるからこそ

牛)「BSE事件」直後でも、味にも品質にも自信を持って販売していた洋ちゃんの牛肉ですが、まず飼育方法の面での秘訣やこだわりはどういうところにありますか?

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洋)安心安全で美味しい牛肉を作れる秘訣は、こだわりの餌にあります。うちの牛の餌は、自家栽培の牧草に乳酸菌を入れて発酵させたものを使います。自家製の餌を100%使用しているので、どの牛も同じ品質・肉質で出荷、販売することができます。それを食べさせると小さな牛も大きく育ちますね。また、外部の餌から持ち込まれる感染症などを排除出来るため、お客様に自信を持って提供することができます。

牛)次に直売所で販売するときのこだわりや特徴はありますか?

洋)まず直売所で自分の牛肉を販売するためには、自分で育てた牛を市場に出し、市場に出た自分の牛を自分で買い戻す必要があります。たまに他の牛を買って試食しますが、自分の牛が一番美味しい自信がありますね(笑)。そして市場から買った牛肉は、1ヶ月間低温熟成させてから店頭に並びます。熟成させることで旨味が増しもっと美味しくなります。また他所のお肉に比べて、日にちが経ってもお肉の色が変色しづらいのも大きな特徴だと思います。




今も消費者に牛肉を直接届ける想いとは

牛)BSE事件の翌年からオープンした「ベコ屋の洋ちゃん」は、今では地域に欠かせない存在になっているように感じます。お肉もとても人気があるのに、なぜ当時と変わらず週末(金・土・日)限定の営業なのでしょうか?


洋)営業日が週末の理由は、一般的な会社勤めのお客様だと、週末が休日になりますよね?そうすると週末に家族揃ってゆっくりご飯を食べる時間がある。そういったお客様の家庭での団らんに、洋ちゃんの牛肉を使って欲しいと思っているからです。


牛)私も洋ちゃんの牛肉を食べるときは家族全員が揃っていましたし、特別な食事だった思い出があります。


洋)同じレベルのお肉を売っているお店より値段は低く販売していると思いますが、量販店のお肉よりは少々高い価格帯です。だから毎日買って食べて欲しいとは思っていません。週末の少し特別な時間を過ごしたいと思ったときに、買いにきてくれるお肉屋さんでありたいと思っています。


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角田市のずんだ祭りでも大人気の洋ちゃんの牛肉

牛)素晴らしい想いですね。おっしゃるように「ベコ屋の洋ちゃん」の牛肉は、品質に比べて買いやすいイメージがあります。


洋)通常の価格設定をする場合は、その時に仕入れた価格で販売する価格を決めると思います。しかし「ベコ屋の洋ちゃん」では、牛肉の販売価格はランクや部位ごとにそれぞれ固定しています。仕入れ値で販売価格を変動させず、いつも同じ値段で販売しています。


牛)仕入れ値がいつもより高くなるときもありますよね。そうすると利益が減ることになると思いますが?


洋)もちろん仕入れ値が高いときはあります。でもそれでいちいち販売価格を変えていたら、お客さんも安心して気軽に買えないじゃないですか。だからうちはいつものお肉をいつもの値段で売ることにもこだわっています。


牛)素晴らしいお話をたくさんありがとうございました。インタビューを通してお客様への思いが伝わってきました。加えて、最後に自分のお肉を使っている料理人の方や使いたいと思っている料理人の方々にメッセージはありますか?


洋)「良いものを安心安全に消費者に届けてほしい」ただそれだけです。




 

<後記>


今回、私が洋ちゃんのインタビューに伺うことができたのは、私の亡くなった祖父と洋ちゃんが大親友であり、私も幼少期の頃から凄くお世話になっていたからです。洋ちゃんと会うときはお酒がある席が多かったせいか、お酒を飲んでにこにこしている洋ちゃんのイメージが強く、洋ちゃんが仕事をしている姿を想像しようとした事すらありませんでした。この機会を通して私が知り得たのは、真剣に仕事と向き合うプロの顔でした。

45年です。

洋ちゃんが消費者のことを思い続けて来た歳月です。好きな仕事だからこそ、いつまでも一生懸命できるとおっしゃっていました。「継続は力なり」来年から社会人になる私にとって、大切なことを学べたインタビューでもありました。 最後にもうひとつ。

インタビュー終了後にいつものように雑談していると、一旦落ち着いた雰囲気から再度エンジンがかかってきた洋ちゃんは、経営者としての考えを話し出しました。「従業員に対して給料の支払いが遅れたことは一度もありません。従業員もそうだし、私自身ももちろんお金は欲しいです(笑)。納得いく牛肉を消費者に届け、しっかりと利益を上げれば、消費者もこちら側もみんな笑顔になる。」

私はこの消費者だけでなく、作り手側も笑顔にしようとする姿にも凄く感銘を受けました。自分もお客様も納得して利益を上げる。商売をする上で当たり前のことですがとても難しいことです。

「常に買いに来てくれる常連様がいるからこそ、うまくやっていけている」そうおっしゃった洋ちゃんの顔はとても嬉しそうでした。その様子から経営者として掲げている理念を実践し、ベコ屋の洋ちゃんに色々な立場で関わっている人達を幸せにできている実感があるのだと思えました。

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冒頭でも申し上げましたが、私は飲食店でアルバイトをしています。昔からプライベートでもお世話になっている洋ちゃんの牛肉を調理し、お客様に提供出来ることが幸せです。その料理を食べたお客様の笑顔を私は見ているからです。

洋ちゃんのつくる側も食べる側も幸せにしたいという想いがここでも実現していると、ふと気がつきました。

なんてかっこいいんだ洋ちゃん。

この幸せの起点は間違いなく「ベコ屋の洋ちゃん」です。


皆様、この週末はドライブがてら「ベコ屋の洋ちゃん」へ足を運んで、にこにこ笑顔のベコ名人から幸せを分けてもらってはいかがでしょうか。 Writer profile

牛木章裕。東北学院大学4年在学。veeell Inc.インターン生。愛称はあっくん。Youtubeホーム画面のおすすめ動画は、ほぼ乃木坂46の動画で埋まるほどの乃木オタ。「乃木坂48」と間違えて言われると、上司相手でも説教をしてしまう。

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