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農業は一期一会


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かくだ創業スプラウトは平成30年度より「食の創業支援」を実施し、「食」に関する創業がしやすい街づくりに取り組んでいます。角田市には豊かな食材があり、個性的で素晴らしい多くの生産者さんが角田の「食」を支えています。素晴らしい生産者さんたちの魅力を皆様に伝えたい!この記事を見た方達が、この生産者の食材を食べたい!使いたい!と思うキッカケにしたい。なかなか触れる機会がない生産者さんのストーリーを、伝えていくのがこの企画です。

今回取材をお願いしたのは、角田市枝野地区の山本農園の山本重人さん(以下、山本さん)です。山本さんはIターンで角田市に移住し、約6年前に就農されました。山本さんは農業の傍ら、かくだ創業スプラウトのプログラム「社長料理人への道」に参加し、栽培しているトマトや春菊を活用した商品開発にも取り組まれています。今回の取材では、こだわりの生産方法のエピソードや、農家としての想い、今後目指していきたい展望について伺いました。現在、山本さんが挑戦しているクラウドファンディングについてもお聞きしました。



インタビュア:舟山直道(以下、舟)

インタビュイ:山本重人(以下、山)



北海道から宮城で就農
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山本さんは、トマトや春菊をハウスで栽培している

舟)本日はよろしくお願いいたします。まず始めに、山本さんは角田市にIターンして新規就農をしたとお聞きしましたが、何年前に就農したのですか?


山)約6年前ですね。


舟)就農したきっかけは何だったのですか?出身は北海道ですよね。


山)18歳まで北海道に住んでいて、大学で東京に出ました。


舟)そこからどのようにして就農していったのですか?


山)まずは親戚の農家の手伝いをして、ノウハウを学びました。その他に、仕事の休みを利用して、宮城県で開催している新規就農者向けの勉強会に参加していました。


舟)農業をやろうと決め手になったのはどういう所ですか?


山)2011年の東日本大震災があったのが大きいですね。当時はIT関係の仕事をしていたんですが、自分がやりたい仕事なのかなと疑問を感じていました。震災の一年後に親戚の農家の手伝いに行き、農業をしていた時に、農業を仕事にしたいなと思ったのがきっかけです。


舟)実際に就農するためには、農業の知識や技術面が必要だと思うのですが、どのようにして身に付けていったのですか?


山)農業の知識は大学で学びました。他にも周囲の人の話を聞いたり、先輩農家さんとお話していく中で、最新の情報をもらい、常に情報をアップデートしていきました。技術面は農業実習や、青年海外協力隊の活動に参加しました。事前研修のような形で大学の農場で1年ほど勉強し、それから海外にも行って勉強しました。


舟)海外にも行って勉強されたんですね。最初に栽培したのはどの農産物だったのですか?


山)就農始めの当時は、ハウスを建てられなかったので、モロヘイヤ、ブロッコリーを栽培しました。ハウスを建てた後ははトマト、最近では春菊を栽培しています。


舟)最近は春菊が大変好評みたいですね。


山)そうですね。おかげさまで。地区内で年々生産者が減ってきて、同じ地区の農家の方からお誘いを受けて栽培を始めたのがきっかけです。


舟)角田市の枝野地区に移住して何年目になるんですか?


山)2011年の冬頃からですね。色々と気にかけてくれる人が多い地区ですね。最初は新規就農するなんて変わった人だなと思われていました(笑)最近では先輩農家さんから色々とアドバイスや、応援をしてもらっています。ありがたいですね。




食べるところまで考えた野菜づくり
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ハウス内にテントウムシを離す事で、害虫を駆除してくれる

舟)先ほど春菊を栽培しているハウスを見せていただいたのですが、ハウスの中にテントウムシが飛んでましたよね?


山)そうなんです。テントウムシをハウスの中に離す事で、殺虫剤を使わずに害虫を駆除しているんです。


舟)それは非常に賢い方法ですね。この方法を考案したきっかけは何だったのですか?


山)外から虫が入ってこないように、ハウスの両端にネットを張っているのですが、それでも小さい害虫が入ってきてしまいます。その対策として、テントウムシを離す事で、小さな害虫を食べてもらっているんです。そうすれば、農薬、殺虫剤を減らす事ができると思いまして。


舟)山本さんが独自で考案した事なのですか?


山)そうですね。色々と研究を重ねました。防虫ネットを張っていたとしても、虫はどこからか入って来ますので、対策をしないと虫が増えてしまいますので。


舟)手間は掛かりますが、そこにこだわる理由は、農家として、食べる人の事も考えているという事ですよね。


山)農薬を使わない方が、消費者にとっても安心、安全ですよね。農薬を使用すると、味に影響が出てきますし。食べる方にとって、美味しいものでありたいという想いがあります。


舟)ひと手間を惜しまないという部分が、山本さんが農業をする上で大切にしているポイントなんですね。


山)袋に詰めて出荷すれば終わりではなく、購入した人が、料理する、食べる所まで想像して行っています。正直、そこには値段が付かないですが、私の愛情、サービスですね。


舟)直売所やスーパー等に置いて終わりではなく、その先の事も考えているんですね。


山)売れてなんぼではなく、食べてもらってなんぼですね。農家から見れば、作物が沢山あるので、その内の一つなんですが、食べる人からみれば、初めての一つです。一期一会ですよね。野菜嫌いにならないでね。というメッセージもありますね。


舟)野菜嫌いな人を減らしたいという想いもあるんですね。


山)自分の野菜で、野菜嫌いにならないで欲しいという気持ちもありますね。


舟)やはり、農薬や化学肥料を極力使用しない事で、野菜の味も変わるんですか?


山)そうだと思いますね。野菜は葉っぱを食べますので。えぐみとかも違うと思います。


舟)確かに、山本さんの春菊を試食させて頂いたのですが、全然苦みがなくびっくりしました!私は春菊の独特な苦みが苦手なのですが、春菊が苦手の私でも食べる事ができました。


山)そう言ってもらえると嬉しいです。春菊は鍋用とサラダ春菊を栽培しているのですが、皆さんから好評です。秋保や道の駅かくだ等で販売しているのですが、都市部にいる娘に贈るんですという方や、中には買い占める方もいますね(笑)ありがたいです。




現在の農業のあり方に危機感を感じる
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かくだ創業スプラウトが実施するプログラム「社長料理人への道」にも参加

舟)山本さんは農業の楽しさを日々実感する一方で、市場にコントロールされる農業のあり方に疑問や危機感を持っているとお聞きしました。それはどのような部分なのですか?


山)私は間違っていたんですね。昨年の台風19号の被害に遭うまでは。それまでは、数字と値段ばかり見ていました。


舟)数字と値段いうのは、売上の数字でしょうか?


山)そうですね。あとは量的な部分ですね。そればかり見ていました。でも、それでは力が出てこないといいますか、誰のために野菜を作っているのかと。


舟)モチベーションの部分ですよね。


山)基本的に、農家は今の仕組みでは儲けが少ないんですよね。儲からないとなると、質ではなく量の方に行ってしまうんですよ。その部分に囚われると何が起きるというと、例えば、市場価格が高い場合、自分の野菜が評価されたと錯覚してしまうんです。逆に価格が安いと、自分の野菜が駄目なんじゃないかと思ってしまうんです。


舟)そのように思ってしまいがちですよね。


山)それは勘違いだと思いながらも、でも、生活をしていなければいけません。では、どうすればいいのかと考えていた時に、台風19号により、私の住んでいる枝野地区や、畑が被害に遭ってしまいました。


舟)台風19号では、角田市も甚大な被害を受けましたよね。


山)当時は被害が大きく、先行きが不安でした。この状況の中で、儲けが少ない農業を続けていくのかと。でも、ありがたいことに、色々な友人、知人に復旧のお手伝いをしていただきました。その時に、この人たちを野菜を再び栽培しようかなと思ったら元気が出まして。


舟)感謝の気持ちですね。


山)そうですね。やはり、自分にできる事は野菜作りかなと思いました。もし、その人たちが来なかったら、離農していたかもしれません。そのくらい自分の中では大きな出来事でした。色々な方々から励ましのメッセージをいただき、皆さんに恩返しがしたくてたまらなくなりました。食べてくれる人を思いながら農業をし、マーケットの規格や価格に左右されない、本当に美味しい野菜を皆様に届けたいという原点に戻ろうと決意をしました。




美味しい野菜を食卓へ
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山本さんが栽培しているこだわりの春菊

舟)山本さんは現在、先ほどお話いただきました目標を達成するための取り組みとして、クラウドファンディングにも挑戦しているんですよね。


山)そうなんです。先ほどお話したように、数字ではなく、食べてくれる人、応援してくれる人を思って農業を続けていきたいと思いまして。色々なやり方があると思うのですが、今回考案したのがミールキット(※1)です。

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山本農園の新鮮な野菜が詰まったミールキット

舟)なぜミールキットなのですか?


山)忙しい現代社会ですので、工夫することで日常の調理の時間を時短できないかなと思いました。そうした時に考えた一つの方法がミールキットでした。農家ならではの新鮮な野菜が詰まったミールキットを届けることで、忙しい日々の中でも、新鮮な野菜を食べて日々の活力をつけてほしいと思いまして。


舟)山本さんの採れたての新鮮な野菜を食べれば、活力が出そうですね!今回開発したミールキットの試作品には、山本さんが育てた春菊を始め、春菊を使用した加工品も入っているんですね。


山)最初は農家だけでやろうと思ったんですけども、それは無理だと思いました。やはり台風被害を受けた角田市や、仙南地域全体で手を取り合って、台風被害からの復興を目指したいなと思いまして。農家だけでなく、料理人の方のお力もお借りしています。


舟)今回の台風19号は角田市のみならず、近隣の丸森町も甚大な被害を受けましたよね。まだまだ復旧、復興の途中ですが、仙南地域全体で手を取り合って頑張っていきたいですね。


※1ミールキットとは、食事をつくるのに必要な材料一式、レシピが同梱され、献立を考える事や、調理手間を減らすセットの事。




農家として目指すもの
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角田市を元気に!

舟)最後になりますが、山本さんの今後の夢や、目標を教えてください。


山)まず一つ目が、今回考案したミールキットの試作品を通じて、家庭に元気を届けるという事ですね。時短する事によって、少しでも時間に余裕を持っていただけたり、家族の食卓が彩るお手伝いができたらと思っております。


舟)食べる時間を彩る、楽しくという部分も、農家が考えていきたいという事ですね。


山)ミールキットには、スーパーではあまり売っていない野菜もお届けしたいと思っています。食卓に珍しい野菜が並ぶ事で、皆さんの食卓が華やかになったり、作る人も工夫ができて楽しくなるのかなと思います。


舟)料理のバリエーションが増えるのは良いことですよね。


山)変わった野菜があると、これ何?と、家族の会話のきっかけにもなるのかなと思います。将来的には、高齢者の方でも簡単に作れて、飲み込みやすいものを入れたミールキットも作りたいと思っています。子供からおじいちゃん、おばあちゃんまで、家族全員で一緒に食卓を囲めるようにしたいですね。高齢者や介護者向けのミールキットにも挑戦してくことで、生活の質の向上に役立ちたいと考えています。


舟)やはり、食事は家族団欒がいいですよね。


山)そうですね。もう一つの目標は、農業は一期一会だと思うので、美味しい野菜を食べて欲しい、野菜嫌いの方をなくしたいという気持ちですね。悪い印象を持って欲しくないなと思いまして。


舟)野菜は美味しい!という事ですね。


山)野菜嫌いの人こそ、食べてもらえるようにしていきたいです。そのためにFacebookでの情報発信や、直売所にPOPを設置するなど、積極的に情報発信をしています。こだわりの部分を多くの人に伝えたいです。


舟)反応はいかがですか?


山)おかげさまでいいですね!昨日もレタスを出荷しに行ったのですが、すぐに売れちゃいました。一人で手が回らないですね(笑)


舟)嬉しい悲鳴ですね(笑)


山)そして、昨年の台風19号の被害、消費税増税、最近はコロナウイルス等により、地域のモチベーションや経済が低迷している中で、どうにかして角田市を元気にしたいという気持ちがあります。農家が美味しい野菜を食卓まで届けられるように、これからも頑張っていきたいと思っていますので、応援よろしくお願いします!


舟)本日は長時間ありがとうございました!お話を聞いていて、山本さんの挑戦する姿はとてもワクワクしました。私も負けずに頑張りたいと思います!




 


<後記>


今回、山本農園の山本重人さんにお話を伺いました。山本さんは農家の傍ら、かくだ創業スプラウトのプログラム「社長料理人への道」や、ビジネススクール等に積極的に足を運んで勉強をしている熱心な農家さんです。農家は毎朝早く起きて作業し、作物が天候や気温に左右される仕事です。その中でうまく時間を作り、ビジネスの勉強にも取り組まれている姿勢はとても凄い事だと思います。


山本さんは取材の中で、美味しい野菜を食べて欲しい、野菜嫌いの人をなくしたい。という想いを何度も話していました。実は、お話を聞いていて、心が痛かったのです。実は、私は野菜が大の苦手なんです。もちろん、春菊も苦手でした。山本さんの春菊に出会うまでは。


取材後、恐る恐る、山本さんの春菊を生で食べてみました。すると、あの春菊独特の苦みがないんです。それには驚きました。ほのかに後味として春菊の風味が残りますが、まったく苦みを感じませんでした。


山本さんは、農業は一期一会と言っていました。確かに、最初に食べたときの印象は大事ですよね。私は春菊というと、苦いというイメージがあり、食わず嫌いになっていました。でも、山本さんの春菊は、これまでの概念を覆す味でした。ぜひ、山本さんの想いのこもった春菊を、多くの方々、野菜嫌いの方こそ食べて欲しいと思います。秋保ヴィレッジ道の駅かくだで購入できますので、ぜひ食べてみてください!


なお、山本さんは3月29日(日)までクラウドファンディングに挑戦しています。本文中で紹介したミールキットの試作品開発のための資金を応援してもらうプロジェクトです。けっして、商品を買うプロジェクトではありませんので、価格が高く感じるかもしれません。しかし、農家のあり方を変えようとする山本さんにご共感いただいて、応援して頂けますと幸いです。ぜひ、クラウドファンディングのページもご覧ください。




Writer profile

舟山 直道。veeell Inc.マネージャー。 野球とバスケ好きな小ネタ王子。推しメンは角田市出身の楽天イーグルス熊原 健人選手。

写真が趣味で、スポーツ写真や風景写真を撮影してSNSに投稿!写真を日々勉強中。

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