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角田にクラフトビールあり!

更新日:2019年8月11日


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かくだ創業スプラウトは平成30年度より「食の創業支援」を実施し、「食」に関する創業がしやすい町づくりに取り組んでいます。角田市には豊かな食材があり、個性的で素晴らしい多くの生産者さんが角田の「食」を支えています。そんな素晴らしい生産者さんたちの魅力を皆様に伝えたい!この記事を見た方達が、この生産者の食材を食べたい!使いたい!と思うキッカケにしたい。そんな想いを伝えていくのがこの企画です。

今回取材させていただいたのは、角田市の仙南シンケンファクトリーでクラフトビール(※1)を製造しているブルワー(※2)の岡恭平さん(以下、岡さん)です。仙南シンケンファクトリーでは本場ドイツビールのスタイルをコンセプトに、数多くのクラフトビールを製造。中でも、「ヴァイツェン」は世界で3番目に古い歴史を持つ国際的ビールコンテストで5年連続受賞しているんです!今回、市内外に多くのファンを持つ仙南シンケンファクトリーのクラフトビールの美味さの秘訣について迫りました。記事の最後には、新作のクラフトビールの情報もありますよ!

(※1)クラフトビールとは、職人技のビール、手作りのビールなどを意味する表現。

(※2)ブルワーとは、ビールを醸造する職人のこと。



インタビュア:舟山直道(以下、舟)

インタビュイ:岡恭平(以下、岡)



「誕生のきっかけ」
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1997年オープンの仙南シンケンファクトリー

舟)本日はよろしくお願いします。早速ですが、そもそも、なぜ角田市でクラフトビールを製造することになったんでしょうか?


岡)理由として一番大きいのは、1994年に行われた酒税法改正です。ビールは酒税法で年間何リットル製造してくださいという指示があるんですね。酒税法改正前はビールの最低製造数量基準が2000キロリットルで、この数字は正直、大手メーカーにしかできない量でした。


舟)2000キロリットルというと、凄い量ですね。

岡)それが酒税法の改正により、最低製造量が60キロリットルに大きく引き下げされました。この規制緩和により、1997年以降、全国各地に少量生産のいわゆるクラフトビールが次々と誕生していきました。


舟)仙南シンケンファクトリーが角田市にできたのも1997年ですよね。


岡)仙南シンケンファクトリーのシンケンはドイツ語でハム、ファクトリーは英語で工場を意味します。当時、ビールといえばドイツということになり、本場ドイツビールの製法を採用することになりました。また、ドイツといえばハム、ソーセージが有名で、当時はみちのく豚や黒豚を飼育している畜産家が沢山いたので、その豚肉を使用してハム、ソーセージを製造していこうという話になりました。生産量も上向きで、ドイツ視察も行いました。しかし、開業当初は併設するレストランにお客さんがたくさん入っていましたが、ドイツのスタイルが洋食なので、地域にあまり根差しておらず、徐々にドイツ料理から地場産食材を利用した料理へ方向転換をしました。


※仙南シンケンファクトリー設立の経緯や現在の情報については、所長を務める大塚昇さんに補足していただきました。




クラフトビールの特徴
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ブルワーの岡恭平さん

舟)私も仙南シンケンファクトリーのビールのファンなのですが、製造しているクラフトビールの特徴を教えてください。


岡)現在はピルスナー、ヴァイツェン、スタウト、ペールエール、ササニシキIPA、ZAMURAI、はちみつビールを製造しています。あとは限定のビールを都度、製造しています。特徴というと、実はあまりないんですね。色々なスタイルのビールがあるので、これが他のクラフトビールと違うというのは正直あまりないんですよ。


舟)主力商品はピルスナーやヴァイツェンですか?


岡)そうですね。レストランで提供する商品は断然ピルスナーなんですけども、その他、飲食店に卸すのはヴァイツェン、ペールエール、IPA、限定ビールです。


舟)クラフトビールの中でも「エール」と「ラガー」の二種類があるんですよね。


岡)ピルスナーがラガーで、他の種類のビールはエールになります。違いは発酵の仕方で、エールが上面発酵(※3)、ラガーが下面発酵(※4)です。シンケンファクトリーで多く製造しているのはエールの方で、エールは発酵期間が短いので、次々と多様なビールを製造することができるんです。また、発酵の温度が高いので、酵母自体の香りが出ますし、ホップの味や香りも乗せやすいんです。でも、大手メーカーのビールのほとんどはラガーのピルスナーなので、皆さんが一番飲み慣れているビールはラガーの方になります。


舟)2014年から世界で3番目に古い歴史を持つ国際的ビールコンテスト「インターナショナルビアカップ」ジャーマンスタイル・ペール・ウィートエールスタイル部門でヴァイツェンが毎年受賞していますが、受賞を続けている中で心掛けているところをお聞きしたいです。


岡)現在製造しているヴァイツェンがきちんと評価されるかどうかを確かめるために応募しています。賞を取れるレベルのヴァイツェンなのかと。2015年は金賞だったので、特に出来が良かったのだと感じました。

舟)岡さんがブルワーになってから、製造方法を変えたことはあるんですか?


岡)ヴァイツェンの製造方法は相当変えています。原料費から何から、全て変えていますね。毎年受賞していますが、造り方は毎年違います。


舟)毎年造り方を変えながらも、2014年から毎年受賞しているんですね。その年によって、テーマとかはあるんですか?


岡)ビールを造る技術が全国的にレベルが上がってきているので、色々な製法が出てきているんですね。それで色々と試しています。


舟)常に新しいことにチャレンジしているんですね。。


岡)そうです。おそらく、今のヴァイツェンは金賞を取れると思いますよ!今の製法が一番

美味しいと思います。時間はかかりますが。


(※3)上面発酵は、上面発酵酵母を使用し、やや高めの温度で発酵を行う醸造法のこと。

(※4)下面発酵は、下面発酵酵母を使用し、低温で発酵を行い、発酵が終わると酵母がタンクの底に沈降する。

(引用元:サントリーHP 上面発酵、下面発酵とはなんですか?より)




ビール作りは”環境作り”
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製造工程を分かりやすく説明していただきました。

舟)ビールを製造する上で何が一番のポイントですか?


岡)一番は掃除ですね。


舟)掃除というと?


岡)我々、ビールを造っているブルワーの仕事というのは、酵母が動きやすい環境を作ってあげるのが役目なんです。酵母が食べやすいモルトの投下、酵母が香りを出しやすいホップの使い方をすることで、酵母が生きやすい環境を作っていくことが我々の仕事です。汚いタンクの中では酵母もきちんと動かないんです。


舟)農業で土づくりが大切なように、ビールを製造する上でも環境作りが大切なんですね。


岡)そうですね。酵母が生きやすい環境を我々が整備して作ることが一番のポイントです。

それが一番難しいですね。


舟)ビールを製造する上で一番のこだわりは何でしょうか?


岡)原料の持っている味を最大限に引き出したいということを考えてますね。原料は麦とホップ、酵母ですね。酵母というよりは元々のポテンシャルです。それぞれの原料のポテンシャルを100%使いきりたいというこだわりがあります。麦芽に関してはドイツ、イギリス産が主です。ホップはドイツ、チェコ、アメリカ、ニュージーランド、一部国産を使用しています。酵母に関しては3種類。ラガーに1種類、エールにに2種類使用しています。限定のビールには色々な酵母を使い分けています。はちみつビールにはベルギーの修道院の酵母を使用しました。

舟)岡さんは前職に味噌の製造会社で製造を担当していたそうですね。味噌とビールは同じ発酵系なので、考え方も近いと思うのですが、製造していて面白みを感じているところはどんな点ですか?


岡)発酵は基本的に面白いです。発酵はどちらかというと、のんびりしている人の方が美味しいものを作るそうです。酵母さん、あとは適当にやっておいてと。あまり手を付けない方がうまいものができるそうです。なので、モルトとホップが持っているポテンシャルを引き出してあげて、酵母が生きやすい環境を作ってあげることが一番のポイントです。


舟)この仕事をする上で、岡さんの一番のやりがい、モチベーションは何ですか?


岡)造ったビールが美味しくて、それを飲んでくれる人が沢山いることですね。今は角田市だけでなく東京とかにもイベントで販売に行きます。私がお客様に直接ビールを注ぐ機会もあり、その時に美味しいね。と言ってもらえることが一番のモチベーションです。


舟)逆に難しい、大変だったことを教えてください。


岡)角田市というまちを悪く言うつもりはないんですが、ビールというものに対して、1つの種類しか知らない人が多いかなと思います。ここに来て、お客さんからとりあえずビールと言われるんですが、ビールはビールだけど、海外に行くと、ピルスナー、エール、IPAをくださいとビールの種類を言うんですよ。ちょっとずつでも新しいスタイルのビールを製造して、ビールの種類と味の違いを浸透させていくというのが未だに全然できていないので、そこが苦労している部分です。


舟)それぞれのビールに、旨み、特徴、こだわりがありますもんね。




飽くなき探求心
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目指すビールに沿ったホップや麦芽の考え方を説明する岡さん

舟)今まで色々な種類のビールを開発されていますが、どういう風に考えて生まれているんですか?この前ははちみつビールが新たに販売されましたよね。


岡)はちみつを使用してくださいと言われまして、ここにあるピルスナーにはちみつを入れても、普通じゃん!という感じじゃないですか。はちみつは味的に甘さと香りが結構あるので、それに合う酵母を考えると、ベルギーの修道院で使っている酵母がいいのかなと思いました。これが結構香りを出す酵母なんです。ベルギーで造られているトラピスト、アビーというビールがあるんですが、そのビールは元々、キャンディシュガーという糖類を入れる前提の造り方のビールなんです。そうすることでアルコール度数を高めることがベルギーのトラピストの伝統的な造り方なので、それにはちみつを入れたら絶対に合うだろうと思って造ってみました。


舟)へぇ~。ベルギーで使っている酵母を使用したんですね。


岡)特に、最近のベルギーの酵母は、ニュージーランドのホップの香りと合わせると、結構良い香りを織りなすんですよ。はちみつビールにはニュージーランドのホップを使用しました。今回使用したのは、ネルソン・ソーヴィンという白ブドウのような香りがするホップで、ソーヴィニヨン・ブランというワインのやつなんです。それとはちみつって、結構ニュアンス的にいい感じじゃないですか。なので、そういう風にしたんです。


舟)今後、例えば、“角田っぽい”ビールを造れる可能性はあるんですか?


岡)以前、著名人の方からずんだのビールを造ってほしいという依頼があったことがありました。でも、法律上できないというのと、ずんだですと大豆なので香りがしないじゃないですか。なので、それは難しくてできないと断ったことがありました。梅も考えてみたんですが、法律上使うことができません。使えても、原料対比で5%までしか使えないんですよ。梅も加工しないと使えないので、加工品もダメなんです。その部分が難しいですね。


舟)そうすると米ですか?


岡)そうすると米や麦になりますが、でも、ビール用の麦ってあるんですよ。モルトとして投下したときに、ビール酵母が食べる糖をきちんと出す麦であれば問題ないんですが、普通の麦でもやはり違うんですよね。今回、角田産の麦も岩手県にある農業試験センターからビール用麦の種をもらってそれで作ったんですよ。なかなか難しいですね。そう考えると、やるとしたら米ですね。


舟)米は使えるものなんですか?


岡)米は元々ビール免許で20%までは使用してもOKなんです。現在、名取市の美田園ファームから米を使ったビールを依頼されて、現在、ササニシキを使用したたラガービールを製造中です。



常に新しいスタイルを
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次の新しいビールの構想を話す岡さん

舟)最後に、岡さんのこれからの目標を教えてください。


岡)定番のビールを造りつつ、色々な種類のビールを造っていきたいと思います。現在、新しいスタイルのビールはアメリカが中心です。新しいスタイルのビールをここでも造っていきたいと思っていますので、そのためには自分の技術の勉強が必要になってくると思っています。


舟)常に新しいビールを造っていくことがこれからの目標なんですね。


岡)現在、新しいビールは突拍子のないものができ始めているので。


舟)今度、こういうビールをやってみたいなというのはあるんですか?


岡)ミルクシェイクですかね。


舟)えっ!何ですか、ミルクシェイクって?


岡)ラクトースという乳糖を使ったニューイングランドみたいなビールをミルクシェイクIPAと言うんですよ。


舟)そういうものがあるんですか?


岡)一昨日飲んだミルクシェイクが美味しかったので、面白いかなと。でも、ミルクシェイクは弊社が持っているビール免許では造れないんですよ。乳糖というのは添加物になるので、発泡酒になってしまうんです。その部分が難しいですね。


舟)他にも新しいビールを開発中とお聞きしたのですが。


岡)実は、3月5日(火)に代官山にあるスプリングバレーブルワリー東京でお披露目のイベントが行われます。ホップの香りと味を全面に出したビールで、「ニューイングランドスタイルIPA」というビールです。去年にアメリカの北東のニューイングランド地方で造られた新しいスタイルのビールで、激濁りでとろみのあるビールです。でも、グレープフルーツジュースみたいな香りでフルーティーなんですよ。ただ、アルコールが8%なので結構危険です(笑)


舟)近々、新しいビールが販売されるんですね。楽しみにしています!ビールは大人になると身近な飲み物ですが、どうやって造っているかまでは分からないですよね。どのように香りと味を決めているのかなど、色々なことを伺うことができて勉強になりました。ビールは種類がたくさんあって、味や風味のレパートリーが全然違うので、本当に面白い世界ですね。本日はありがとうございました!




 


<後記>


今回、仙南シンケンファクトリーでクラフトビールを製造しているブルワーの岡恭平さんにお話を伺いました。角田市民にとっても馴染みのある仙南シンケンファクトリーのクラフトビールですが、ブルワーがどのように工夫を凝らして製造しているのか知っている方は少ないのではないでしょうか。私も取材するまで想像すらしたことがありませんでした。私たちが普段、「とりあえずビールで」と注文して飲んでいるビールには、ピルスナー、ヴァイツェン、IPAなど、様々な種類とそれぞれ特徴があり、一つ一つにブルワーの職人技が詰まっているのです。この記事をきっかけにビールの奥深さを知り、実際に仙南シンケンファクトリーに足を運んで、飲み比べして楽しんでいただけると嬉しいです。

実は取材中に新たに発売する「ニューイングランドスタイルIPA」を少しばかり試飲させてもらいました。飲んでみると、ビールなのにグレープフルーツのような香りで、少し苦みがある、とても個性的でおいしいビールでした。ついつい飲みすぎてしまいそうですが、アルコール度数は8%と高めなので、皆さん、飲み過ぎには注意ですよ!(笑)

「今までブルワーは私一人だったんですが、最近、新しい仲間が増えたんですよ」と話す岡さん。 ブルワーが2人となって更にパワーアップし、次はどんなビールが生まれるのかとても楽しみです!



Writer profile

舟山 直道。veeell Inc.マネージャー。

角田市地域おこし協力隊としても活動。veeellと協力隊業務を日々掛け持ちながら奮闘中。

野球とバスケ好きな小ネタ王子。推しメンは横浜DeNAベイスターズの熊原 健人選手。

2018年、角田市でメディアに出演している数が最も多いTVスター(自称)

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